銀行の融資担当者が見ている決算書のポイント
中小企業の経営者の皆様、融資を申し込む際に「決算書のどこを見られているのかわからない」と感じたことはありませんか。銀行の審査部門経験者から伺った話ですが、実は、銀行の融資担当者は決算書の特定のポイントを重点的にチェックしているそうです。融資を申込する場合、そのポイントを理解して適切に「数字を説明する」ことで、融資に対する銀行の姿勢を大きく変えることができます。
銀行の融資担当者は、決算書から主に以下の3つを判断しようとしています。
1. 財務の安全性:倒産リスクはないか
2. 収益の安定性:継続的に利益を生み出せるか
3. 返済の確実性:借入金を返済できるか
これらを確認するため、融資担当者は決算書の中の特定の指標や項目に注目します。以下、具体的に見ていきましょう。
銀行の融資担当者が決算書を手にして最初に確認するのは、以下の3つの指標です。
業種にもよりますが、この比率が40%を超えていれば「安心」、20%を下回ると「注意」とされます。もし自己資本比率が低い場合でも、役員からの借入金などがあり、それが長期安定的なもので実質的には資本に近いものであれば、その点を説明することで評価が変わる可能性があります。
短期的な支払い能力を示すこの指標は、120%以上が理想的です。100%を下回る場合は、売掛金の回収サイクルや在庫回転率の改善計画を具体的に示すことが必要です。
この数値が10年を超えると借入金返済能力について「注意」と判断されます。キャッシュフローの計算にあたっては、一時的な特別損失を除いた実質的なキャッシュ創出力を強調することが重要です。
銀行が損益計算書で最も注目するのは、利益の「継続性」と「安定性」です。単年度の高い利益よりも、3~5年間にわたって安定した利益を計上している企業の方が高く評価されます。
売上が右肩上がりである必要はありません。むしろ、売上が一時的に減少していても、その要因が明確で合理的であり、今後の回復見込みが具体的に説明できることの方が重要です。新型コロナウイルスの影響や業界全体の動向など、外的要因による売上減少の場合は、その旨と回復戦略を説明しましょう。
営業利益率が業界平均と比較してどうなのか、過去数年間でどのように推移しているのかが重視されます。一時的に営業利益率が低下している場合は、原因分析と改善策を具体的に示すことで、銀行の融資担当者の理解を得やすくなります。
銀行が融資を検討する際、重視するのが「なぜその資金が必要なのか」という点です。この際に活用されるのが資金運用表です。
資金運用表は、前期と当期(または前々期と前期)の2期の貸借対照表を比較し、資金の運用(どこにお金を使ったか)と調達(どこからお金を調達したか)の状況を分析する資料です。
この資金運用表により、銀行は企業の資金使途が健全かどうかを判断します。設備投資や売上増加に伴う売掛金・在庫の増加による資金需要は「前向きな運用」として評価される一方、借入金返済のための借入や、業績悪化による資金不足の穴埋めは「後ろ向きな運用」としてネガティブに評価されます。
特に運転資金の申し込みでは、売掛金や在庫の増加額と借入申込額の整合性が厳しくチェックされます。売上が横ばいなのに在庫だけが大幅に増加している場合、その理由と今後の在庫処理計画を明確に説明する必要があります。
資金運用表は単なる資金使途の確認にとどまらず、企業の経営課題を浮き彫りにします。例えば、毎期継続して売掛金が増加し続けている場合は、回収管理に問題があることが推測され、銀行は返済能力に不安を感じます。このような場合は、売掛金の回収改善計画を併せて提示することが重要です。
損益計算書で黒字でも資金繰りが厳しい企業は少なくありません。銀行はキャッシュフロー計算書(または自主作成のキャッシュフロー分析資料)で企業の真の実力を判断します。
最も重要なのは営業活動によるキャッシュフローがプラスになっていることです。一時的にマイナスの場合は、その要因(売掛金の増加、在庫の増加など)と改善計画を明示しましょう。
設備投資の内容とその効果予測、投資回収期間を具体的に示すことで、将来の収益性向上に対する銀行の理解を得られます。
ここまで見てきたように、銀行は決算書の様々なポイントをチェックしています。しかし、数字そのものだけでなく、「どのように説明するか」も融資の成否に大きく影響します。以下、効果的な説明のためのポイントをご紹介します。
単なる数字の羅列ではなく、現状分析、問題点の抽出、具体的な改善策、数値目標とその根拠を明記した経営改善計画書を作成し、決算書と併せて提出することで、銀行の融資姿勢は大きく変わります。
融資実行後も月次試算表を定期的に提供し、計画の進捗状況を報告することで、銀行との信頼関係を築き、次回の融資をスムーズにします。
自社の数値を業界平均や同規模企業と比較し、相対的な位置づけを明確にすることで、客観的な評価を得られます。
銀行融資の成否は、決算書の数字だけでなく、「どのように説明するか」によって大きく左右されます。財務諸表の数値を客観視し、弱点があれば素直に認めつつ改善策を示し、強みがあれば適切にアピールする。そして資金使途を明確にし、返済原資を具体的に示すことが、銀行との長期的な信頼関係を築き、継続的な資金調達を可能にする鍵となります。
しかし、これらの作業は決して簡単ではありません。決算書の分析から資金運用表の作成、経営改善計画書の策定まで、専門的な知識と経験が必要な場面が多々あります。特に、銀行の視点に立った資料作成や効果的な数字の見せ方については、多くの経営者の方が苦労されているのが現実です。
当税理士事務所では、このような融資に関する一連の業務をトータルでサポートしております。決算書の分析から融資申込書類の作成、銀行との面談時のアドバイスまで、経営者の皆様の資金調達を成功に導くためのお手伝いをさせていただきます。融資でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。