資金繰り改善のヒント


~「なんとなく不安」を解消するための第一歩~

はじめに

「来月の支払い、大丈夫かな」「このまま資金がもつかしら」

多くの経営者の方が感じていらっしゃる、この“なんとなくの不安”。

実はその正体は、「先の見通しが立っていないこと」からくるものです。

資金の流れが把握できていないと、黒字なのにお金が足りない、という状況に陥ることもあります。

ですが、ご安心ください。資金の動きを「見える化」することで、その不安は確実に軽くなります。

今回は、資金繰りに悩む経営者の方へ、すぐに取り組める改善のヒントをお届けします。

なぜ「なんとなく不安」になるのか

1. 資金の流れが見えていない

売上や利益は把握していても、現金の動きまでは見えていない――このようなケースは少なくありません。

「黒字なのにお金がない」状態は、まさにその典型です。

2. 将来の支出が予測できない

設備投資、税金、賞与など、まとまった支出はあらかじめわかっているはず。

でも「いつ・いくら必要か」が見えていないと、どうしても不安がつきまといます。

3. もしもの備えが不十分

「いざという時にどう動けばいいのか」が決まっていないと、不安感がより大きくなってしまいます。

第一歩:現状を正確に把握することから

資金繰り表をつくってみましょう

まずは、シンプルな資金繰り表をつくるところから始めてみましょう。

難しく考える必要はありません。

  • 月初の現金残高
  • 月内の入金予定(売掛金の回収など)
  • 月内の出金予定(人件費・仕入・税金など)
  • 月末の現金残高(予測)

この4項目だけでも、3ヶ月先まで書き出すと、資金の動きがぐっと見えてきます。

現金化のサイクルを確認

現金になるまでの流れ(=キャッシュコンバージョンサイクル)を把握しておくことも大切です。

計算式:

売掛金の回収期間 + 在庫の保有期間 - 買掛金の支払期間

このサイクルが長いほど、資金が手元に戻るまでに時間がかかるため、運転資金が多く必要になります。

第二歩:改善できるポイントを探す

売掛金の管理を見直してみましょう

  • 回収までの期間は妥当ですか?
  • 前受金や分割払いの提案はできませんか?
  • 支払いが遅れている取引先への対応は?

早めの対策で、資金の停滞を防ぐことができます

在庫管理の最適化

  • 売れ残りの在庫が溜まっていませんか?
  • 売れ筋商品は把握できていますか?
  • 発注のタイミングは適正ですか?
過剰な在庫は、資金繰りを圧迫する要因になります。

支払条件の見直し

  • 支払サイト(買掛金の締めと支払い)を少し延ばせないか、取引先と相談してみましょう
  • 毎月かかっている固定費を一度見直してみるのも効果的です

第三歩:将来に備える仕組みづくりを

資金調達の“備え”をつくっておく

「資金が足りないかも」と感じたとき、すぐに動けるようにしておくことが大切です。

  • 当座貸越の枠を確保しておく
  • 手形割引や売掛債権担保融資の活用
  • 政府系金融機関と良好な関係を築く など

月次モニタリングの習慣化

資金繰り表は作って終わりではなく、「予測」と「実績」を毎月照らし合わせてみてください。

予測精度が上がり、不安の原因を早めに察知できるようになります。

早期警戒ラインを設けておく

  • 現金残高が月商の1ヶ月分を下回ったら
  • 2ヶ月先の資金繰りでマイナスが見込まれたら
  • 売掛金の回収が長引いてきたら

…など、自社なりの“注意信号”を決めておくと、動き出すタイミングが明確になります。

税理士との連携で、改善効果をもっと高める

定期的なご相談を

税理士は、数字の専門家です。月次の資料を共有しながら、資金繰りの実情に即したアドバイスをご提案できます。

税金対策との連携も大切です

設備投資や決算対策など、税金と資金繰りは密接に関わっています。

税理士と連携して進めることで、キャッシュフローの最適化と節税の両立が可能です。

金融機関との橋渡し役として

金融機関とのやり取りにおいて、税理士の作成した資料や説明は、大きな信頼材料となります。

必要に応じて、面談の同席などもご相談ください。

おわりに:まずは「小さな一歩」から

資金繰り改善は、一気にすべてを変える必要はありません。

まずは、現状を“見える化”することから始めてみましょう。

完璧な資金繰り表でなくても大丈夫。

「少し先の見通しが立つ」だけで、経営者の気持ちは驚くほど軽くなります。

私たち税理士も、安心して事業に集中していただけるよう、心を込めてサポートいたします。

ともに取り組みながら、不安を自信に変えていきましょう。

本コラムに関するご質問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお声かけください。

貴社の資金繰り改善に向けて、具体的なサポートをご提供いたします。