【経営に役立つ会計知識】


月次試算表で押さえたい3つのポイント

「月次試算表をもらってはいるけれど、どこを見ればいいのかよくわからない」

「税理士から説明を受けても、どう経営に活かしたらいいのかピンとこない」

そんなお声を、日々多くの経営者さまから伺っています。

月次試算表にはたくさんの数字が並んでいて、少しとっつきにくく感じられるかもしれません。

でも、経営者の方にぜひ押さえていただきたいポイントは、実はほんの数か所。

今回は、限られた時間の中でも「ここだけは見ていただきたい!」という3つのポイントを、具体例とともにわかりやすくご紹介いたします。

1|粗利率の変化に注目を

売上だけを見て、「今月は好調だった」「先月より下がってしまった」と判断していませんか?

実は、それだけでは本当の経営状態は見えてきません。

大切なのは、「粗利率(あらりりつ)」です。

粗利率とは、売上から仕入や原価を差し引いた「粗利益」が、売上の中でどれだけの割合を占めているかを示す数字です。

📌 例)売上1,000,000円、仕入600,000円の場合

→ 粗利益:400,000円、粗利率:40%

◆なぜ粗利率が大切なのか?

ある製造業のA社では、

  • 昨年同月の売上:800万円(粗利率45% → 粗利益360万円)
  • 今月の売上:900万円(粗利率38% → 粗利益342万円)

と、売上は増えていたものの、実際の粗利益は減っていました。

値引きや原材料費の高騰などが原因で、売上が伸びたのに利益が減ってしまうという、よくあるケースです。

◆チェックのポイント

  • 前年同月との比較:季節要因を除いた実質的な変化を見ます
  • 3ヶ月平均での傾向把握:単月のブレをならして確認
  • 粗利率が2%以上下がったら、原因を分析:値引き?仕入原価の上昇?

「売上は上がっているのに利益が出ない…」というときは、まず粗利率を見てみましょう。

2|固定費率で経営効率を確認

固定費とは、売上に関係なく発生する毎月の費用のこと。

代表的なものに、人件費・家賃・リース料・通信費などがあります。

これらを合計して「固定費」とし、それが売上の何%を占めているかを示すのが「固定費率」です。

📌 例)売上1,000万円、固定費300万円 → 固定費率30%

◆なぜ固定費率が重要なのか?

売上が増えても固定費は基本的に変わりません。

ですので、売上が増えれば固定費率は下がり、結果として利益率が上がっていきます。

逆に、売上が減ると固定費の負担が重くなってしまいます。

◆業種ごとのおおまかな目安

  • 製造業:20~30%
  • 卸売業:15~25%
  • 小売業:25~35%
  • サービス業:30~40%

※ビジネスモデルによっても異なりますので、自社の推移を継続的に見ることが大切です。

◆見直すべき固定費の例

  • 人件費:売上に対して40%を超えると注意が必要。ただし、急な削減は逆効果になることも。
  • 家賃:売上の10%を超える場合は、見直しを検討
  • その他の固定費:通信費や保険料なども、積み重なると意外に大きな負担に

3|現金の動きに注目する

「利益は出ているのに、なぜかお金が足りない…」

そんな経験はありませんか?

これは、売上計上と現金の回収・支払いのタイミングがずれていることが原因です。

◆チェックしたい3つの項目

  1. 現預金の残高推移
     → 月商の2~3ヶ月分の現金があると安心です。
  2. 売掛金の回収状況
     → 売掛金が増え続けていないか、回収に時間がかかっていないかを確認。
      売掛金 ÷ 月商 が3ヶ月を超えていると要注意です。
  3. 在庫の滞留
     → 在庫が過剰だと、現金が商品に変わってしまい、資金繰りを圧迫します。

◆借入金の管理も忘れずに

短期借入金が増え続けている場合は、根本的な資金不足のサインかもしれません。

長期借入への借り換えや、資金繰り改善の検討が必要です。

おわりに:月次試算表を「経営の味方」に

月次試算表は、会社の“健康診断書”のようなもの。

「粗利率」「固定費率」「現金の流れ」の3つを毎月チェックしていくだけで、経営の異変にいち早く気づくことができます。

月次試算表を活かすために大切なこと

  • 試算表は翌月15日までに完成するのが理想的です
  • 税理士との月次面談では、積極的に質問してみましょう
     (例:「粗利率が下がった理由は?」「家賃率が高い気がしますが…」など)
  • 定期的な月次監査を受けることで、帳簿の正確性と経営判断のスピードが格段に上がります

試算表を「ただの数字の羅列」ではなく、「経営の羅針盤」として活かしていきましょう。

「うちの数字はどうなんだろう?」「改善のヒントがほしい」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

客観的な視点から、経営者さまにとって本当に役立つアドバイスをご提案させていただきます。

数字に強くなることは、企業の未来を守る力になります。