建設業経営者の皆さまへ


〜税務と経営の基本を押さえて、会社の未来をもっと安心に〜

日々、現場の管理や営業活動で忙しくされている建設業の経営者さま。

「税金のこと、何から手をつけたらいいのか分からない…」そんなお悩みを感じていらっしゃいませんか?

建設業は他の業種と比べて、会計や税務の仕組みが少し複雑。

でも、いくつかのポイントを押さえるだけで、会社の経営がぐんと安定していくこともあるんです。

このコラムでは、私たち税理士が日頃のご相談でよくいただくお悩みに触れながら、建設業ならではの税務・経営管理のヒントをご紹介します。

◎税務の第一歩:「売上をいつ計上するか」で税金が変わる?

建設業の会計でまず押さえておきたいのが、「売上の計上タイミング」です。

「工事完成基準」では、工事が終わったタイミングで売上を計上します。

一方、「工事進行基準」では、進捗に応じて毎期少しずつ売上を計上します。

たとえば3月決算の会社で、2月に着工し翌年1月に完成する工事がある場合…

  • 完成基準 → 翌期の売上
  • 進行基準 → 今期の売上に一部計上

となり、税金の支払時期も大きく変わってきます。

特に金額の大きい工事では資金繰りにも大きな影響があります。

「うちはどちらが合っているのかな?」と思われたら、ぜひ税理士にご相談ください。

◎税務調査で見られやすいポイント

材料費や外注費の“証拠書類”、大丈夫ですか?

建設業は現金取引が多く、税務調査でも材料費や外注費の支払いが重点的に確認されます。

「現金で払ったけど領収書がない」

「契約書は作っていないけど、いつも頼んでる業者だから大丈夫」

…そんなケースは、調査の場ではトラブルになりかねません。

面倒でも、

  • 小さな支払いでも領収書をもらう
  • 外注業者との間には、簡単でもいいので契約書を作る

この2つを習慣にしておきましょう。

◎資金繰りを楽にする工夫

前受金の活用で「お金が足りない」を回避

建設業では、工事の着手時や途中で「前受金」をいただく契約も多くあります。

この前受金をうまく活用することで、支払いと入金のタイミングを調整でき、資金繰りがぐっと楽になります。

たとえば…

💡 総額1,000万円の工事で:

  • 着手金:30% → 300万円
  • 中間金:40% → 400万円
  • 完成金:30% → 300万円

このように分けて契約すれば、材料費や外注費の支払いにあてるお金が、前もって手元にある状態がつくれます。

最近は資材費の高騰もあり、発注者さまに「なぜ前受金が必要なのか」を丁寧に説明すれば、理解を得られるケースも増えています。

◎「忙しいのに利益が残らない」原因は…?

工事ごとの採算をチェックしてみましょう

建設業の経営者さまからよく聞くのが、「仕事はあるのに利益が出ないんです」というお悩み。

その原因のひとつが、「工事ごとの利益の見える化」ができていないことです。

まずは、Excelなどで簡単な表を作ってみてください。

工事名見積売上見積原価実際売上実際原価利益率
A邸改修工事500万円350万円500万円400万円20% → 低下

こうして実績を見直してみると、

「材料費が思ったより高くなった」

「急な追加工事が出た」

といった原因が見えてきます。

失敗を次回の見積もりに活かすことで、会社は確実に“強く”なっていきます。

◎人材確保と人件費の見える化

社会保険は「コスト」ではなく「投資」

2020年から、社会保険未加入業者は現場に入れないルールが本格化しました。

「保険料が高い」と感じている経営者さまも多いと思いますが、これは避けて通れない“必要経費”です。

例えば、職人さんの日給が15,000円だった場合、社会保険などを加味すると実際のコストは18,000円程度になります。

この「本当の人件費」を理解して、工事単価に正しく反映させることが利益確保の第一歩です。

働きやすい環境づくりが人材を守る

若い職人さんが定着しない…

求人を出してもなかなか来ない…

そんなお悩みをお持ちの会社さまも多いのではないでしょうか?

今は、「給与」だけでなく「働きやすさ」も重視される時代です。

  • 有給休暇の取得促進
  • 残業の管理
  • 資格取得支援
  • 退職金制度の整備

こうした取り組みが、結果的に人材の定着や採用力アップにつながります。

◎クラウド会計で経営判断をスピーディに

「帳簿は年に1回、申告のときに見て終わり」では、経営のタイミングを逃してしまいます。

クラウド会計を導入すると、

  • 銀行やクレジットカードと連動して仕訳が自動作成
  • 試算表がリアルタイムで確認できる
  • 経費の入力がスマホで簡単にできる

といったメリットがあり、忙しい建設業の経営者さまにもぴったりです。

月に1度、数字を確認する習慣をつけることで、「お金が足りない」という不安にも早めに気づくことができます。

◎税理士を「経営の相談相手」に

税理士は、ただの“税金の人”ではありません。

建設業に詳しい税理士であれば、

  • 資金繰りや融資の相談
  • 経費の見直し
  • 事業承継や新規事業の計画サポート

といった「経営のパートナー」として、会社の未来を一緒に考える存在になれます。

おわりに:まずは“ひとつ”から始めましょう

「現場が忙しくて、経理まで手が回らない…」

そのお気持ち、私たちもよくわかります。

でも、経営の数字に目を向ける時間をほんの少しでも作ることで、会社の未来は必ず明るくなっていきます。

まずは、できることから。

一緒に、無理なく少しずつ整えていきましょう。

税務や経営に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にお声かけください。

現場を支える経営者の皆さまの力になれるよう、これからも丁寧にサポートしてまいります。