税理士に聞く
原材料の値上がり、人件費の上昇、光熱費の負担増…。経営者の皆さまにとって、コストの増加は今まさに頭を悩ませる課題ではないでしょうか。
「値上げをしたいけれど、取引先にどう話したらいいのか分からない」
「お客様が離れてしまったらどうしよう」
そんな不安から、コストアップを自社で吸収し続け、利益を圧迫してしまっている企業さまも多くいらっしゃいます。
でも、適切な価格転嫁は、会社を守るためにとても大切なこと。
今回は、税理士の立場から、価格転嫁をスムーズに進めるための考え方や準備の仕方を、やさしく解説いたします。
価格転嫁は決して「強気な値上げ交渉」ではありません。
むしろ、今後も安定してサービスや製品を届けていくために欠かせない、“お互いの信頼関係を守るためのお願い”でもあります。
コスト増加をそのままにしていると、気づかないうちに利益が減っていきます。そうなると、設備投資ができなくなったり、資金繰りが不安定になったり…。中長期的に見ると、経営そのものを危うくしてしまうこともあるのです。
利益が減れば、人件費を削らざるを得なくなることも。
がんばってくれている社員の皆さんに、安心して働いてもらうためにも、価格転嫁で適正な利益を確保することがとても大切です。
「価格はそのまま、でもコストは増えている」そんな状況では、品質やサービスにもしわ寄せが出てしまいます。長く選ばれる会社であり続けるためにも、“適正価格で価値を届ける”という意識が必要です。
価格転嫁の話し合いでは、感覚的な説明では相手の理解を得るのが難しくなってしまいます。
「どれだけコストが増えたのか」を、具体的な数値で示すことがとても大事です。
たとえば…
こういった“見える化されたデータ”があるだけで、ぐっと説得力が増します。
価格転嫁の準備には、日ごろの原価管理が欠かせません。
たとえば、
を把握しておくことで、「なぜ今、価格を見直さなければいけないのか」を、冷静かつ客観的に伝えることができます。
手作業で管理するのが難しいと感じたら、会計ソフトや原価管理ツールを導入するのもおすすめです。リアルタイムでの原価の把握や、商品別の利益率の分析などが、よりスムーズにできるようになりますよ。
交渉用の資料は、数字だけでなく「見せ方」も大切です。
こういったポイントを押さえることで、相手も「一緒に考えてくれている」と感じやすくなります。
いきなり「来月から値上げします!」では、相手も構えてしまいます。
3つのステップに分けて、丁寧に進めていきましょう。
値上げをお願いする際は、「価格」だけでなく「価値」も一緒に伝えることが大切です。
たとえば…
「この価格には、これだけの価値が含まれています」と伝えられれば、相手も安心して受け入れてくださる可能性が高くなります。
決算時期や繁忙期など、相手にとっての“話しやすい時期”を選ぶのも大切です。
また、業界全体で値上げの動きがある時期なら、受け入れられやすくなります。
「うちも大変なんです」という気持ち、相手も同じかもしれません。
相手の立場を尊重しつつ、自社の努力や思いも伝えながら、対話の形で進めていきましょう。
値上げが難しい場合には、支払条件の変更や最低発注ロットの設定など、他の方法で利益確保につなげる道を一緒に考えていきましょう。
価格転嫁は、決して“無理なお願い”ではありません。
お互いの立場を尊重しながら、より良い関係を築くための「対話のきっかけ」でもあります。
まずは、自社のコスト構造をきちんと把握し、「なぜ価格の見直しが必要なのか」を、数字で語れるように準備することが第一歩。
そして、感情ではなく事実に基づいた提案と、お客様のことを思いやる姿勢があれば、きっと前向きな話し合いができるはずです。
「うちも価格転嫁したいけど、どう進めたらいいのか…」
そんなお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
業種やお取引先の状況に応じた、実践的なサポートをご提供いたします。
私たち税理士が、経営の味方としてご一緒に考えてまいります。